白菊

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炎と海から、私は生まれた

2014/02/11


X巡後の記憶無しジョナサンが1巡目の自分たちを断片的に夢に見た話。ディオが若干DIOっぽいです。捏造設定有り。
キチっぽくなってしまった気がするので、後味悪かったらすみません。





++++++++++++++



 炎と海から、私は生まれた



船が燃えている。
燃え盛る船の中で、そこから動くことも出来ない。
そこに死への恐怖は無く、ただ、自分の半身ともいえる存在と、運命を共にすることだけを夢見ていた。




「―――…ジョ………ジョジョ!」
 ハッとして、目を見開く。
 息を切らして見上げた先は、燃え盛る炎の中ではなく、見慣れた天井だった。
「大丈夫かい? ひどくうなされていたようだけど」
 隣を見ると、体を起こしたディオの心配そうな顔があった。
「大丈夫…ちょっと、怖い夢を見たんだ」
「夢? こんなに汗をかいて…よほど怖い夢だったんだな」
 ちょっと待っててくれと言ってそっとベッドを抜け出したディオは、綺麗なタオルを持って戻ってくると、優しく僕の顔や首の汗を拭ってくれた。
 僕を心配する彼と、夢の中の彼があまりに違うので、あれはやはり悪い夢だったのだと、少しだけ安心することができた。

「それで、どんな夢だったんだい? 話せば少しは楽になるかもしれない」
 汗を拭ったタオルを机の上に置いて、再びベッドに潜り込んだディオが尋ねる。
 僕と向かい合わせになるように体を横たえたディオの冷たい手を、僕はそっと握った。
「…聞いても、きみはいい気はしないと思うよ」
「なんだい、ぼくも関係してるのか?」
 自分が関係しているとあって興味を惹かれたらしいディオを、僕は何とも言いがたい気持ちで見つめる。
 たかが夢の話だというのに、このことを彼に伝えてもいいのかどうか、躊躇した。内容のせいもあるのだが、伝えてしまえば、何かが壊れてしまうのではないかと、しかしその“何か”の正体もわからず、ただ不安だけが胸に過ぎる。
「大丈夫さ、ほら、言ってごらんよ」
 そんな僕の苦悩など知る禎も無いディオは、なおも僕へ夢の内容を言うように促した。
 だめだと頭の中に警鐘が鳴り響くが、僕はディオに促されるまま、口を開いた。

「夢の中の僕ときみは、今の僕たちと同じくらいの年だったと思う」
「へえ? きみはやっぱりマヌケだったかい?」
「それだけならどんなに良かったか…。夢の中の僕ときみは争ってた…。きみは恐ろしい吸血鬼になってしまって…そして、僕はきみを………殺した」
 はっきりと驚きを浮かべて、ディオが目を見開く。
 まるで現実味の無い夢の話でも、こんなことを言われて良く思う人などいないだろう。ましてや、仮にも恋人から。
 これ以上はやめておくべきなのに、一度開いた口は止まらなかった。
「何が原因かは詳しくはわからなかったけれど、きみが僕を裏切って…そして吸血鬼になったきみを……夢の中できみを、僕は二度殺した。燃え盛る屋敷の中で串刺しにして、その次は古城のバルコニーから君の胸を貫いた後に崖の下へ落として…殺したんだ…!」
 脳裏に、夢の中の映像が思い出される。吹き抜けになった屋敷のエントランスの二階から彼もろとも飛び降りた僕は、飛び降りた先のちょうど真下にあった槍を携えた女神像で、彼を串刺しにした。その次に現れたのは、どこかの街の古城で、彼に恨みを抱きながら戦う己の姿だった。
 自身の重みで槍が体に食い込み、炎に巻かれながらもがく彼の姿を。血を吐きながら崖下へと落ちていく彼の姿を、まるでその場で見てきたかのように消すことが出来ない。
「吸血鬼になってしまったぼくを、きみが退治しただけなんじゃあないのかい?」
「違うんだ、あの僕は間違いなくきみのことを…」
 そこから先は言葉にしたくなかった。出来なかった。
 夢の中で己に向けられた憎しみとも奇妙な執着とも言えるディオの激しい感情も恐ろしかった。しかしそれ以上に、自分が吸血鬼となった彼を倒すという正義感や責任感以上の、彼に対しての明確な憎悪と殺意を抱いていたことの方が恐ろしかった。夢とはいえ自分がディオに対して、いや誰かに対して殺したいと思うことなど、今まで生きてきて抱いたことの無い感情だったからだ。

「………酷い夢だったのだね。ぼくが言うのも、おかしな事かもしれないが…」
 いつの間にか無言で震えていた僕の様子からただ事ではないと察したのか、ディオは僕を抱き寄せた。目の前のディオの温もりが確かに彼が生きていることを伝えていて、僕はしがみつくように彼を抱き返す。
 ディオは8年前、僕たちが12歳の時にこの家に養子として迎え入れられた。
 彼が来たばかりの頃、うちに来た時既に勉強もマナーも完璧だったディオに比べてあまり勉強が得意でなく食事のマナーもなっていなかった僕は、よく父さんに叱られたけれど、そんな時彼はさり気なく僕をフォローしてくれていた。
 何をやらせても上手くこなしてしまうディオに対して悔しさを抱きはしたが、彼が実は影で努力していることも知っていた。それゆえに己の不甲斐なさに何度と無く落ち込み不貞腐れた僕を、慰めて勉強やマナーの練習に根気強く付き合ってくれたのもディオだった。
 彼に感謝や尊敬こそすれど、恨むなど出来るはずもない。
 それに何故だか彼と初めて会った気がしない、遠い昔に会っていたような懐かしさを感じて、僕は彼という存在が気になった。そして、どうしようもなく惹かれたのだ。
 今僕たちは、恋人という関係になっている。
 皮肉混じりの言葉も使うし少々怒りっぽいところもあるし少し意地悪でもあるけれど、一度として約束を破ったことの無い彼が僕を裏切ることなど考えられなかった。もしそうなってしまったら、僕は彼を―――。

「それで、きみは僕を二度殺して、夢は終わったのかい?」
 しがみつく僕の背を優しく撫でながら、ディオが僕に問う。
 彼の胸元に顔を埋めている僕からは今彼がどんな表情をしているのかはわからないが、穏やかに発せられる声から彼が不快感を抱いていないことがわかって、少しだけ安心した。
「………その後…大きな船の中で、僕たちは死んだ」
「今度は一緒に死んだのかい?」
「よくわからないんだ。気付いたら炎に囲まれていて、船は爆発していたからそのまま沈んだのだと思う。………僕はきみの首を抱きしめながら、………死んだんだ」
 燃える船の中で、このまま一緒に死ぬのだと。何か恐ろしいことも、心残りだってあったはずなのだ。どう見てもただ事ではない様子であるのに、あんなに憎んでいたはずなのに、僕は彼と運命をひとつにすることを受け入れ、彼の首を抱きながら、静かな気持ちで死を受け入れていた。

「まるで無理心中だな」
 沈んだ僕の気持ちとは正反対にくすくすと笑う声がして、彼の顔を見上げれば、ディオは優しく微笑んでいた。額をこつりと合わされ、すぐ目の前で赤みがかったアンバーの瞳が僕を見つめる。
「ただの夢だろう? 現実の僕は君に殺されてもいないのだし、僕もきみも死んじゃあいないんだ。そんなに暗い顔をするなよ」
「そうは言っても、凄く生々しかったんだ。それに夢とはいえ、恋人を手にかけるだなんて…気分が悪いよ」
 不快感を一切出さずに僕に微笑みかけるディオに、あんな夢を見て彼自身に話をした後に彼の優しさに触れることは何だか憚られて、そっと彼の体から手を離し合わせていた額を離した。俯き離れた僕の顔を、ディオの男性にしてはほっそりとした長い指が捕らえる。僕の顔を自身へと向けさせ、そのままゆっくりと近づいたと思うと、唇に柔らかく口付けられた。
 顔を離したディオはやはり、優しい笑みを浮かべていた。
「それに何度も僕を殺しても、結局は一緒に死んでしまうなんてきみらしいじゃないか」
「そんなことにならない道だって、あるはずだったと思うんだけどな…」
 夢の中の僕たちは、何故殺しあう結末へと向かってしまったのだろう。考えようにも、その原因が分からないのだから仕方の無いことなのかもしれないが…。
 思案する僕の頬を撫でながら、ディオの指が首へ肩へと滑り落ちていく。アンバーの瞳が優しい笑みから悪戯めいた笑みへと姿を変えた。
「それに今の話で、ジョジョと一緒の最期を迎えるというのも悪くないかもしれないって思っているんだぜ、ぼくは」
 ふふふ、と楽しそうに声を漏らしながら、ディオの指が僕の首の付け根のあたりを首の円周をなぞるようにぐるりと撫でる。月明かりだけの部屋の中で、ディオの瞳の輝きは妖しさを感じさせた。
「一緒に死ぬだなんて、それこそ永遠のようだと思わないかい?」
「僕はそうは思わないな…」
「おや、ジョジョはぼくと一緒は嫌なのかい? ぼくだけが天国へ行けと? それともジョジョだけが逝ってしまうのかい? 恋人を悲しませるだなんて、酷い紳士様だ」
「そ、そういうことじゃあなくて!」
 ディオが意地悪くそんなことを言うものだから、僕はつい返事も必死になってしまう。そんな僕を見て、ディオはまるで悪戯が成功したと言わんばかりに笑っていた。もしかして、僕はからかわれたのだろうか。

「ごめんごめん、冗談さ」
「冗談にしては性質が悪いよ…」
 僕が拗ねたように言えば、すまなかったね、と言いながらくすくすと笑うディオの声が聞こえる。ああやっぱりからかわれたのだと思った。
「僕は、どうせならきみと生きることを考えたい。命ある限り、きみと共にある人生を」
「今度は熱烈だね、紳士様」
「からかわないでおくれよ…本当にそう思っているし、僕にはもう、君しかいないのだから」
「ふふ、ぼくも君と共にありたいと心から思っているよ」
 そう言いうと、ディオは僕の頭を胸元に抱き寄せ、両腕で僕を抱きしめた。
「もう一度眠りなよ。こうしていればもう悪い夢はきっと見ないから」
 子供をあやす様に優しく髪を撫でられ、ぴったりと合わさった体から伝わるトクトクと静かに鳴るディオの心臓の鼓動が子守唄のようで、不思議と誘われるように目蓋が重くなる。ほんの少しだけ、懐かしさを感じるのは何故だろう…。状況は逆だけれども、あの夢の最期と、同じだからだろうか。
「おやすみジョジョ、良い夢を」
「うん……ディオ、今何時だい?」
「2時を過ぎた頃かな」
 眠る前に、彼に本当は今日一番に伝えたかった言葉があったことを思い出し、落ちそうな目蓋をなんとか持ち上げる。

「誕生日、おめでとう。…あんな話の後で、申し訳ないけれど…」
 2月7日は、ディオの誕生日だった。彼を迎える際に父さんが調べた限りでは、貧困層に生まれた彼の出生の記録は不明確で、実際はいつなのかは分からなかったらしい。けれどもディオ自身がこの日だと言ったので、僕たちはそれを受け入れている。実際の誕生日かどうかは分からなくとも、彼にとっては大切な日なのだろうから。
 本当は、あんな物騒な話よりも先に伝えたかったのだけれども。
「ふふふ、覚えていてくれたのだね」
「当たり前じゃあないか。愛しいきみの生まれた大切な日を忘れるわけがないよ」
「ありがとう、愛しいジョジョ」
 旋毛にディオが口付けた感触がして、さっきから彼ばかりが僕にキスしているなと思ったので僕も彼にしてあげたかったけれど、落ちる目蓋に逆らえず、そのまま彼の胸に抱かれて僕の意識は眠りへと落ちていった。
 まるで海に揺られるように沈む意識の中で、朝目が覚めたら、最初に彼にキスを贈ろうと思った。愛するディオに。




 月明かりが漏れる部屋の中、己の腕の中で規則正しい寝息が聞こえる。腕の中にジョジョがいるのは同じであるのに、“あの時”のジョジョは眠っているように見えても呼吸は止まっていたなと柄にも無く感傷にふける。
 “あの時”は彼の何もかもを手に入れたつもりでいて、彼の骸を抱きながら100年近く海底で眠っていたのだが、結局は彼の首から下の肉体以外何も手に入れていなかったのだと、彼のいない100年後に気付かされた。彼のいない世界で彼への恋慕と、心の虚無だけが残った。
 だからこそ、“次”は間違えないようにしたのだ。ジョジョを成長させるためのライバルでありつつ、よき兄弟として親友として、ジョジョの信用を得ながら。同じ轍は踏まないよう、細心の注意を払った。
 余計な疑惑を抱かせないために、あの愚かな父の手紙も出す前に密かに中を確認し、筆跡を真似て書き直し余計な情報は削除してからジョースター家へ送った。
 石仮面は変わらず前と同じ場所にあったが、予期せぬきっかけで骨針が作動してジョジョが記憶を思い出す恐れがある。「どうしても恐ろしい」とジョースター卿に訴えて壁から外させた。今はジョジョの母親の他の遺品と一緒に保管され、埃をかぶっている。
 他にも邪魔や障害になりうるものは徹底的に排除した。
 私への疑惑を抱かせないために彼が気付かないよう細心の注意を払いながら、心がこのディオだけで満ちるように、ジョジョには私しかいないのだと思わせるために、徹底した。
 前の名残があったのか、初めて会った時から私にどこか懐かしさを感じ、初めて会った気がしないとジョジョ自身が思っていたことも私に有利に事が進んだ助けになったようで、ジョジョは私という存在を意識していた。私が彼を欲するように、彼もまた私という存在に惹かれたのだ。そして彼自身が私に告白し、私と彼は恋人となった。

 ジョジョが私に愛を囁く度に、体を繋げる度に、私はジョジョを手に入れた喜びに身を震わせる。
 心を、体を手に入れたと。
 それにジョースター卿が死んだ今、本当の意味で彼には私しかいないのだ。友人はいるが私と共通の、深くは干渉してこない者たちばかりである。
 ジョジョを支え、隣に並ぶ存在は私だけとなった。

 そんな中、完全に記憶として思い出したわけでは無いようであるが、ちょうど今日、今と同じ年頃にジョジョは死に、『DIO』としての私が生まれた。そんな日に夢を見るのは何かの暗示なのか、それとも…。
「どうなろうと関係ない。今度こそ私は手に入れたのだから…ジョナサン・ジョースターを…」
 腕の中の、何もかも私だけとなった愚かで愛おしいジョジョのブルネットの髪を撫でながら、あの海底での96年間以上に私の心は喜びに満ちていた。
 何も知らないジョジョ、愛しい、愛しい私だけのジョジョ。
 ジョジョには私しかいないように、私にもジョジョしかいないのだ。

 もし再び私に憎しみを抱くようなことがあれば、彼は前以上に私を憎み、同時に彼の中は前以上に私でいっぱいになるのだろう。再びジョジョの美しい翠の瞳が私への憎しみにドス黒く燃えることを思うと、ぞわりと身震いがし、ほぅ、と恍惚の息が漏れた。
 彼の死を再び私のものにすることも悪くは無いが、その時は、今度こそ私の死でもあるのだ。私とジョジョは、二人で一人なのだから。


「おまえの死から、私は生まれたのだよ、ジョジョ…」


 もし前の記憶を思い出して、今までのことを全部知った時。今度はお前は私をどうするのだろうね。



end



ヤンデレなディオに愛されて眠れないジョジョ、みたいな話が書きたいと思っていたのですが、全く違う胸糞な話になってしまいました。
一応2月7日ネタ(遅刻)。ジョナサン疲れ様、DIO様おめでとうございます。


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